『ゴーゴーボーイズゴーゴーヘブン』感想
「ゴーゴーボーイズゴーゴーヘブン」はだいぶ前に観に行った舞台ですが、思ったことがたくさんあったので今更ながら書き留めることにしました。
2016年7月7日(木)〜7月31日(日)
作・演出 松尾スズキ
出演・阿部サダヲ 岡田将生 皆川猿時 池津祥子 宍戸美和公 村杉蝉之助 近藤公園 平岩紙 岩井秀人 伊藤ヨタロウ 松尾スズキ 吹越満 寺島しのぶ他
邦楽演奏・綾音
あらすじ
「とある国で非合法の男性売春が横行しているという情報を得たベストセラー作家・永野は実態調査のため現地に潜入する。観光客や地元好事家たちの前で踊りその目を楽しませている美しい少年ダンサーたち“ゴーゴーボーイ”が怪しいという噂だ。永野は調査を続けるうちにゴーゴーボーイの一人、トーイの危険な美しさに魅了され、様々なアクシデントに巻き込まれていく。一方、日本で永野の帰りを待つ元女優の妻ミツコは浮気をしているが、夫が行方不明になった悲劇のヒロインとして現地に向かうことを余儀なくされる。 ジャーナリストの亡霊、いい加減な通訳、少年たちの運命を握るゲイのインテリアデザイナー・・・。様々な面倒臭い人々や、異国のアウェイ感に阻まれ、お互いに探し続けるのに決して出会えない夫婦の間に永遠のような時間が流れる。探すことは愛なのか?そして“ゴーゴーボーイ”たちの運命は?」(公式引用)
*ネタバレあり
インタビューでは「BL」がクローズアップされてたけど、個人的にはそこがメインではないかな?と。ラストシーンでは永野(阿部サダヲ)ミツコ(寺島しのぶ)の今後が気になるような演出になっているし、同性愛とか異性愛とか性別で区切るものじゃなくて、シンプルに愛がテーマにあるように思います。
演出にある和楽器の演奏とそれに合わせた伊藤ヨタロウさんの口上(と呼ぶのでしょうか)は、物語の中心が異国なのもあって舞台にどこかアンバランスで不気味な印象を与えますね。でも舞台に引き込まれていくうちにその音楽があってなくてはならないものに感じるのもまた不思議なところ。
激しい内戦が続いている架空の国「ジャワガスタン」 。登場人物たちは国という大きな政治に振り回される人生だったのかなと思えたけど、よくよく考えると少し違う。もちろん治安の悪さが影響している部分だってあるけれど、結局は彼らが自ら起こした行動そのものが人生だったんじゃないかな。
永野の目的は大学の先輩でテロ組織に捕まった八木(吹越満)を助けに行くことだったけど、理由は昔ジャワガスタンでトーイという少年を買いクラブから逃がそうとしたけれど結果死なせてしまったことをバラされたくなかったから。ミツコだって現地に向おうとすれば悲劇のヒロインとして話題性が生まれて、自身が出演する映画も注目を浴びると思ったから。村杉蝉之助さんが演じていた総理大臣が「自己責任」と言っていましたが(とても似ていたし動画の演出の仕方に笑いました)それがまかり通ってしまう行動なんだよなあとしみじみ。創作物だからこそこうやって言えるのかもしれませんが、彼らの人生は誰かのせいでこうなったものじゃないんですよね。
人間らしい行動がみんなにあって部分的に共感を覚える中、トーイ(岡田将生)にはそうした感情は全く芽生えませんでした。そもそも死んだら椅子にしてほしいという感覚は、彼の今まで生きていた環境によって出来たもののような気がします。「美」を永遠にしたいのは言ってしまえば「あるある」かもしれないから、そういう意味ではトーイも人間らしいのかもしれませんね。
松尾さんの作品は不謹慎だけどつい笑ってしまったり、さっきまで笑えていたことが急に笑えなくなったりすることが多く、最終的には作品について考えることがたくさんできて楽しいです。