星野源について

皆さん、星野源は好きですか。

 私はわからなくなりました。

 

彼は今、ほぼ無敵状態と言っても過言ではない。賞もたくさん取って、海外のアーティストと一緒にライブもしている。テレビで彼の曲『ドラえもん』を表した人が「今の星野源だからこそできる曲」(意訳)と言っていたのがすごく腑に落ちた。知名度と人気があるからこそ出来る曲。

役者としての活躍も凄まじく、主演の映画も公開された。(役者としての彼への気持ちはもっと舞台でてほしいなで完結しているので割愛します。)

私が彼を知ったのは宮藤勘九郎脚本のドラマ『11人もいる!』だ。主演が神木隆之介で、脚本家と主演目当てで見始めた。その中で星野源はちょっと頼りなさげな主人公の叔父で、物語には基本的に時折出てくる程度だった気がする。ドラマは毎回歌が流れるけど、私なぜか最初これを父親役の田辺誠一が歌ってると思ってた。今考えるとなんでそうなったのか不思議だ。

そんな勘違いをしていた中、星野源が歌っているシーンがドラマの最終話に近い時に出てきて、私はそこで一気に心掴まれた。

あのさえない、ギャグパートによく出てきた叔父さんがあんな静かに歌ってる。ギャップだ。またその数ヶ月後かな?『夢の外へ』が販売されてMステに出演して、好きになるタイミングがすごくよかったと思う。その『夢の外へ』もアップテンポな方が好きな自分としては好みで、そこから星野源という存在にのめり込むようになった。

ドラマで心掴まれ『夢の外へ』が出る前に『くせのうた』や『くだらないの中に』を聴いていたけど、その時は正直ピンときていなかった。元からバラードが苦手で、ゆっくり歌っているのがどうもムズムズしてしまう。でも『夢の外へ』を聴いてから聴き直すと不思議と何度も聴きたくなって、いわゆるスルメ曲って感覚だった。

 

これは私が彼を好きになろうとしていたのかもしれない、と今になって思う。一曲じゃなくて全てを好きになりたい。その時は特に他に目立って好きなアーティストもいなかったから、せっかく見つけた「好き」を否定したくなかったのかもしれない。

 

そこからは出ているアルバムを買い、スマホに落として日常的に聴くようになった。好きなアーティストを聞かれて星野源って答えた時にわかってもらえないのはちょっと不満だったけど、彼が好きな仕事で食べていけるなら正直知名度はどうでもいい。今もそれは変わらない。

くも膜下のニュースを見た時は、血の気が引いた。それまでの仕事量は素人から見ても膨大だったし、『働く男』を読んでもワーカーホリック気味な様子が垣間見れる。中止になった武道館も中止。やることになったけどもう一度中止。2回目の公演が決定した時に私はチケットが取れたけど、本当に大丈夫かなって心配もあった。でも彼の「楽しんでほしい」という言葉に逆らいたくはなかったし、実際姿を見れてライブが始めってからは純粋に楽しめました。

 

そうやってずっと好きだった中で、徐々に徐々に変わってくるものがあった。

 

1番はアミューズへの移籍だと思う。星野源のライブ頻度だと前の事務所の規模じゃ大変なことはわかっていたし、最初は随分大きな事務所にいったなと思っただけだった。ただ事務所が彼の名前を売る為にたくさん音楽番組で『SUN』を歌うのに違和感があった。

この曲はドラマの主題歌で、ドラマが始まる時も音楽番組で歌ってた。でもその回数は、事務所を移籍してドラマの放送が終わってからの回数と比べて少ない。数ヶ月前にリリースした曲を歌番組で歌うのって、それこそ大ヒットした曲くらい。そこで事務所の大きさの違いを感じさせられて、もやもやした。主題歌だったドラマが好きだったのも多分理由のひとつだ。

そこからざっくりになるけど『恋』が売れた。星野源が出演しているドラマの効果とかEDのダンスのキャッチーさもヒットの理由としてはあったのだろう。私も『恋』もドラマも好きで、一気に売れたから冷めたとかは特になかった。その後のアルバム『YELLOW DANCER』の収録曲も大好きだ。ただ特集記事が組まれる機会が出演番組が増えていく中で、ひとつひとつ追うのはやめていった。キリがないからというやつで、これは嬉しい悲鳴だと思っていた。ただ、だんだん私の中にあった「好き」に違和感が出てきたのは確かた。

決定的に自覚したのは2018年にリリースされた『POP VIRUS』だろう。

基本シングルではなくアルバムを買う私は当然のようにそれを買った。アルバムで初公開になる曲も多くてわくわくしながら1曲目からアルバムを聴き始めた。

 

ない。好きな曲がない。

 

いいな、と思う曲はある。でも『エピソード』に入っている『ステップ』や『YELLOW DANCER』に入っている『Down Town』のように頭にガツンと入ってきて、何度も聴きたくなる曲がない。

ガツンとっていうのは抽象的だけど、星野源の曲ではイントロでそう思うことが多かった。そこからメロディや歌詞に惹きつけられる。でも『POP VIRUS』にはそう思える曲がなくて、何周もアルバムを聴いた。好きじゃなかったなら聴くのをやめればいいのだが、聴くのをやめられなかった。怖かったのだ。何年も好きだった気持ちが一瞬で無になるような感覚が。『地獄でなぜ悪い』の特典映像で病室にいる彼を見た時の息が止まった心地、武道館で歌っている姿を見て涙が出たこと、『恋』がヒットしてたくさんの人に知られるようになった時の嬉しさ。全部がなかったことになる気がして怖かった。私はいつの間にかそれほどまで星野源に対して熱量を捧げていたのだ。

 

ここまで長々と書いて申し訳ないが、はっきりとした結論は最初の文の通り出ていない。今は『POP VIRUS』の中だと『サピエンス』が好きな曲に入りそうだけど、聴きたいと思ってわざわざスマホで聴くことはない。星野源のインタビューで音楽性の話は散々聞いているし、冷静に考えれば音楽性が変わったなら聞き手の種類が変わるのは当然だ。でも私は、まだ星野源を好きでいたい。嫌いとか冷めたとかは絶対に言いたくない。常に変化する彼に私はいつか完璧に追いつけなくなるかもしれないけど、少なくとも今は立ち止まりたくなかった。彼に立ち止まって欲しいとも思わない。とりあえず自分が中途半端なことを素直に認め、彼のやることをファンとして見ていたいと思う。あと一つだけ具体的な要望があるとすればツイッターでばかくんをまた見たい。

 

とりあえず今日配信された曲が頭にガツンと入ってきたので、私はシングルを買うことになるだろう。

 

www.youtube.com

 

好きな曲です。

『ニンゲン御破算』感想

お久しぶりです。

前回の投稿が2017年だったことに自分で引きました。

舞台はそれ以降もたくさん見ているのですが、感想を書こうと頭の中で整理する時間と熱が中々なく…。下書きには「ロッキーホラーショー」の感想が残っていましたが、今回はそちらではなく「ニンゲン御破算」の感想を書きました。

去年の年末にWOWOWで「ニンゲン御破算」とその初演である「ニンゲン御破産」がやっていましたね。「ニンゲン御破算」は東京の抽選が全部外れて、誕生日だからと大阪の公演に応募したら当選したのがいい思い出です。感想に行きます。

f:id:pesca711:20190117001505j:plain

2018年7月5日〜7月15日(日) 大阪公演

作・演出 松尾スズキ
出演 阿部サダヲ 岡田将生 多部未華子 荒川良々 皆川猿時 小松和重 村杉蝉之介 平岩紙 顔田顔彦 少路勇介 田村たがめ 町田水城 山口航太 川上友里 片岡正二郎 家納ジュンコ 菅原永二 ノゾエ征爾 平田敦子 松尾スズキ

あらすじ

頃は幕末。加瀬実之介(阿部サダヲ)は、人気狂言作者・鶴屋南北松尾スズキ)、河竹黙阿弥(ノゾエ征爾)のもとへ、弟子入りを志願していた。大の芝居好きで、成り行きとはいえ、家も侍分も捨て、狂言作者を志している実之介。「あなた自身の話のほうが面白そうだ」と南北に言い放たれた彼は、自分、そして自分の人生に関わってくるニンゲンたちの物語を語りだした―。もともとは元松ヶ枝藩勘定方の実之介は奉行から直々の密命を受けていた。それは偽金造りの職人たちを斬ること。幼馴染みのお福(平岩紙)との祝言を済ませた実之介は、偽金造りの隠れ家へ向かい、職人たちを次々に殺めたのだった。その様子を目撃していた、マタギの黒太郎(荒川良々)と 灰次(岡田将生)の兄弟は殺しのことは黙っている代わりに自分たちを侍にしてくれるよう、実之介に取り引きを持ちかけた。そこへ駆け込んできた娘が一人。黒太郎たちの幼馴染みで、吉原へ売られていく途中のお吉(多部未華子)だった。ちょうどその頃、実之介は、同志の瀬谷(菅原永二)や豊田(小松和重)から、悪事の責任をすべて負わされて切腹を迫られていた・・・・・。(公式引用)

 

続きを読む

『ゴーゴーボーイズゴーゴーヘブン』感想

 

「ゴーゴーボーイズゴーゴーヘブン」はだいぶ前に観に行った舞台ですが、思ったことがたくさんあったので今更ながら書き留めることにしました。f:id:pesca711:20170329212250j:plain

2016年7月7日(木)〜7月31日(日)

作・演出 松尾スズキ
出演・阿部サダヲ 岡田将生 皆川猿時 池津祥子 宍戸美和公 村杉蝉之助 近藤公園 平岩紙 岩井秀人 伊藤ヨタロウ 松尾スズキ 吹越満 寺島しのぶ
邦楽演奏・綾音

 

あらすじ

「とある国で非合法の男性売春が横行しているという情報を得たベストセラー作家・永野は実態調査のため現地に潜入する。観光客や地元好事家たちの前で踊りその目を楽しませている美しい少年ダンサーたち“ゴーゴーボーイ”が怪しいという噂だ。永野は調査を続けるうちにゴーゴーボーイの一人、トーイの危険な美しさに魅了され、様々なアクシデントに巻き込まれていく。一方、日本で永野の帰りを待つ元女優の妻ミツコは浮気をしているが、夫が行方不明になった悲劇のヒロインとして現地に向かうことを余儀なくされる。 ジャーナリストの亡霊、いい加減な通訳、少年たちの運命を握るゲイのインテリアデザイナー・・・。様々な面倒臭い人々や、異国のアウェイ感に阻まれ、お互いに探し続けるのに決して出会えない夫婦の間に永遠のような時間が流れる。探すことは愛なのか?そして“ゴーゴーボーイ”たちの運命は?」(公式引用)

  

続きを読む